桃の花遠くに見えて長電話
四月馬鹿ならぬ万年馬鹿もゐて
忙しくなるふりもして新学期
麗かに急行さへも滑り入る
辛菜をたゞ煮て食べる贅沢に
気分だけちよつと新たに春大根
鶯餅椿餅草餅蕨餅
まだ寒いころ三椏の爺臭さ
勝手口に似合う辛夷の闇姿
木蓮は盛りを過ぎること早し
木瓜の花かたちは悪くなきものの
春の宵台所にひとり立つもよし
遠く近く春灯ありて飛鳥山
亀鳴くといはるゝ池やまだ鳴かぬ
柳の葉すべてに若き時はあり
赤坂ゆ飯田橋まで桜狩
おなじ人と花見をするも二三年
花の茶屋コカコーラなど飲む爺
花めぐり無きにしもあらず寂しさも
年増とはいかなるものか八重桜
朝桜どうでもいい世となりにけり
珈琲の旨くなる日よ花曇
ふんだんに見収めて花の塵を掃く
菜の花に犬は駆け寄りたがるもの
復活祭甦らないこともよし
さへづりに仰げば空とさみどりと
壺焼に終はりしいのち頂きぬ
桜貝まぼろしとなる誰もかも
春潮を見に行かぬまゝ何年目
夕暮れのとりわけ寂し潮干狩
この年もなかばに近し夏の服