2015年4月3日金曜日

石榴もがれて

砧打つ音など聞いたこともなし

初猟と聞けば耳澄む耳澄ます

秋の川無音の行に入りにけり

色鳥を追ふまなざしの主われも

ビニールの袋に林檎なまめかし

いつのまに石榴もがれて帰り道

渋柿をまづ食はされるポチやシロ

甘かつた無花果といへば中近東

桐の実も眺めつつ待つおやつ時

やや寒き朝の都会を新靴で

牛蒡引くさま思ひつつも買ふのみで

馬鈴薯をやつぱり入れることにする

重くなる荷もしかたなし甘藷買ふ

梅もどき暮れがたの苑閉まる頃

障子洗ふ家なども過ぐひとり旅

ゐのこづち付けて出てくるかくれんぼ

団栗のはかま見事な作りなり

丑三つ時胡桃食べたし飽きるほど

銀杏の臭ふこの先しばらくは

木の実降る音贅沢に茶屋の餅

秋雨の首相がなにか言つてゐる

秋うらら犬とあるじを蔓延らす

金木犀だつたかと思ふ灯を落とす

自販機を台風は洗ふ縦横に

秋夕焼白い表紙の本届く

秋袷ひかり受けゐる喜びを

下手な字で新酒と書いてある酒屋

鹿威し程よく聞こえ古刹かな

秋耕やわれは見てゐるだけの人

鹿垣の開け締めをひとりたゞひとり