砧打つ音など聞いたこともなし
初猟と聞けば耳澄む耳澄ます
秋の川無音の行に入りにけり
色鳥を追ふまなざしの主われも
ビニールの袋に林檎なまめかし
いつのまに石榴もがれて帰り道
渋柿をまづ食はされるポチやシロ
甘かつた無花果といへば中近東
桐の実も眺めつつ待つおやつ時
やや寒き朝の都会を新靴で
牛蒡引くさま思ひつつも買ふのみで
馬鈴薯をやつぱり入れることにする
重くなる荷もしかたなし甘藷買ふ
梅もどき暮れがたの苑閉まる頃
障子洗ふ家なども過ぐひとり旅
ゐのこづち付けて出てくるかくれんぼ
団栗のはかま見事な作りなり
丑三つ時胡桃食べたし飽きるほど
銀杏の臭ふこの先しばらくは
木の実降る音贅沢に茶屋の餅
秋雨の首相がなにか言つてゐる
秋うらら犬とあるじを蔓延らす
金木犀だつたかと思ふ灯を落とす
自販機を台風は洗ふ縦横に
秋夕焼白い表紙の本届く
秋袷ひかり受けゐる喜びを
下手な字で新酒と書いてある酒屋
鹿威し程よく聞こえ古刹かな
秋耕やわれは見てゐるだけの人
鹿垣の開け締めをひとりたゞひとり