なんといふあつさ残暑とトニー谷
朝虹をひとり見つけてふふふふふ
バリ島のスコール滝のごとくなり
怪談の作者よろこぶ夏館
テレビなど点けっぱなして雲の峰
上層階のレストランから雷を
夕立に為すすべもなき犬と主
扇よりスマホ握られゐるロビー
道をしへ気づけば誰もをらぬ山
川下り終へればうとし編笠は
こがね虫ドアを閉めるといふ時に
壮麗な毛虫も見ずに今の子は
夏肌の美しき娘と青山椒
鬼灯市たゞの一度も行かざりき
夏山はふもとから見て満足す
登山する人らの色の合はせかた
浮ついてゐてよい時期の青芒
どことなく蕗の葉触りづらきまゝ
紫の色欲し茄子の大人買ひ
もうなにもいふこともなし秋なれば
優曇華をどこそこで見たと輝く目
蝉の殻ここにあるよと言ひたがる
夏藤の下で化粧を直させて
草いきれ遠巻きにしつつシャーベット
浜木綿も見飽きた頃の夕餉時
ワンピース山百合のやうな柄はどう
浮草なぞ売つて真夏の花稼業
マスクメロン御無沙汰永き今世紀
玉蜀黍甘いよといふ安いよと
新生姜ちょつと見惚れる肌の色
バナナ買ふ夏の季語でもなくつても