古酒を飲みつゝつつく新秋刀魚
栗飯の幟に惹かれファミレスに
名月をどうぞ俳句にしてくれろ
隠されて妨げられて良夜かな
月見てふ文字あちこちに商店街
うすばかげろふ上の四文字と次の二字
留まらせておくべきものに赤とんぼ
秋の蝶逝きし誰かと先ず思ふ
捨扇しておきたけれど狭き家
秋彼岸ことばだけでも寄せるもの
秋日傘ひとつ動いてゆく川辺
買ひ来ても安置しておく葡萄房
木犀の香る時節となりにけり
梨よりは桃や林檎の無粋者
爽やかに厚手Tシャツの肌ざはり
手すりには凝縮したる秋冷が
待宵や雑居ビルより出る女
秋の夜を心しんみり放りおく
長き夜を豪華客船進む夢
葛の花ふり返るべき数々を
こぼれ萩ベンツアウディマセラッティ
虫あはせ庭いつぱいに御勝手に
露の袖もう一杯飲んで参らうか
紫苑また鬼の醜草(しこくさ)とも呼ばれ
JR駒込駅も曼珠沙華
高原より帰燕告げくる手漉き紙
秋の海いつでもひとり汀まで
秋鰯皮さへうまく剥けたなら
かりがねをごく稀に見る隅田川
秋袷べつの東京あるごとし