2015年4月3日金曜日

枯芙蓉

漱石忌われは読み継ぐバルザック


忙しといふ暇もなく十二月


霜月や霜のはだらの菊畑


決戦の準備にかかる冬みかど


布団干す時の切実短日は


冬の日を鼻風邪程度に抑えつゝ


寒すぎるほどにはあらぬ冬の朝


凍雲を疎林の道に遠望す


鴨一羽二羽寂しくて町の川


あのあたり廊下の寒さ澄みてをり


冷たさは精神の緩み顔洗ふ


冬木まばらに小さき神社守りゐぬ


大学は冬木立してありにけり


猟人の話もまぜて北の宿


猪鍋を食べに来いとは言はれても


枯野とは賑やかに葉のなるところ


湯豆腐を嵯峨野に喰ひに東海道


夜鷹蕎麦肝心の夜鷹なき無粋


スーパーの入口楽し焼藷で


おでんやの奥の明りの暖かさ


粕汁は好物なれば贅沢に


人参を選び続ける馬鹿らしさ


葉の色の立派な蕪買ひ得たり


枯菊の縁取りのある荒地なり


蝋八会われはこの日もメトロ禅


枯芙蓉世をせかせかとさせたまゝ


熱燗を本当に熱く出しやがる


貞徳忌あの鷹揚さ学び続くべし


里神楽寒さ冷たさ眠たさも


冬の海憧れてゐる町住まひ


ずわい蟹爺婆と食べに行くのもなア