漱石忌われは読み継ぐバルザック
忙しといふ暇もなく十二月
霜月や霜のはだらの菊畑
決戦の準備にかかる冬みかど
布団干す時の切実短日は
冬の日を鼻風邪程度に抑えつゝ
寒すぎるほどにはあらぬ冬の朝
凍雲を疎林の道に遠望す
鴨一羽二羽寂しくて町の川
あのあたり廊下の寒さ澄みてをり
冷たさは精神の緩み顔洗ふ
冬木まばらに小さき神社守りゐぬ
大学は冬木立してありにけり
猟人の話もまぜて北の宿
猪鍋を食べに来いとは言はれても
枯野とは賑やかに葉のなるところ
湯豆腐を嵯峨野に喰ひに東海道
夜鷹蕎麦肝心の夜鷹なき無粋
スーパーの入口楽し焼藷で
おでんやの奥の明りの暖かさ
粕汁は好物なれば贅沢に
人参を選び続ける馬鹿らしさ
葉の色の立派な蕪買ひ得たり
枯菊の縁取りのある荒地なり
蝋八会われはこの日もメトロ禅
枯芙蓉世をせかせかとさせたまゝ
熱燗を本当に熱く出しやがる
貞徳忌あの鷹揚さ学び続くべし
里神楽寒さ冷たさ眠たさも
冬の海憧れてゐる町住まひ
ずわい蟹爺婆と食べに行くのもなア